今回の学会では、朝から様々なセッションに参加させていただきました。
朝一番は、10人ほどの先生方と決められたテーマの中で議論する、そのような場に参加しました。
私が参加したテーマは「コミュニケーション」。
家族に対して、きちんとした対応が出来ているのか、そのような難題がテーマでした。
参加された10人の先生方はいずれも一生懸命で、決してコミュニケーションが取れないわけではなく、より快適に、より上手くコミュニケーションをとるためにはどうしたら良いかを他の先生方の知恵を借りたく参加していました。
1時間という限られた時間でしたが、非常に有意義でした。
もう1度自分を見つけ直す良い機会となりました。
そんな時間をいただきました。
お昼はランチョンセミナーといって、企業の方が主催となるセミナーの司会をしました。
犬用にカビの薬が発売されたことから、カビに造詣の深い先生が講演をして、その補助として参加したわけです。
以前からヒトの薬を使用していたので、薬の使用間隔などに関して新しい内容はなかったのですが、最近、犬や猫などでも限られた情報の中でどのような治療法が妥当なのか、そのような治療の指針が提唱されています。常在しているカビ、すなわちマラセチアに関してもそのような治療指針が提唱されようとしています。
治療は、個々の犬や猫たちの症状や、生活環境に合わせて調整することが必要ですが、基本はこのような指針を元に実施します。
そのような意味では、マラセチアの病気に関する指針が聞けたことは非常に面白かったです。
今回の学会では、もう一つ、参加したセッションがあります。
それが、PRO/CON Debate~ 減感作療法行う、行わない?です。
最近、一つの治療法に対して、違う視点から話をする、そのような講演があります。
治療って、得てして良い内容は話に上がるのですが、不都合な内容はあまり表にでないこともあるので。
今回は、犬アトピー性皮膚炎に対する治療法の一つである減感作療法に関して話をしました。
そもそも減感作療法って何ですか?という話です。
最近、日本においても私たち人間でスギ花粉症の治療として実施されています。
アトピー性皮膚炎の犬が過敏な免疫反応を示している(アレルギー反応を示す)ハウスダストマイト(おうちのなかのダニですね)を定期的に接種することで、体質改善を行う、そのような治療法です。
これまでは海外の製品を輸入して実施していましたが、日本でも同様な製品が販売され、うちの病院でも使用しています。
さて、今回の講演での私の役割は「行わない」、すなわち否定的な意見です。
顔から大抵ヒールに選ばれるんですよ。
先ほども書きましたが、うちの病院でも実施している治療法ですが、あえてなぜ行わないのか(行わないとすればどのような理由があるのか)ということを話しました。
犬アトピー性皮膚炎における治療の主体は痒み止めです。
いっぽう、減感作療法は体質改善です。すなわち目的が異なります。
長所は
●副作用がほとんどないこと
●約60〜70%の犬で痒み管理が可能であること
短所は
●定期的に注射を打たなければならないこと
●効果判定に時間がかかること
●50%の痒みがなくなる犬を含めて約60〜70%で痒み管理が可能ということ
です。
犬アトピー性皮膚炎は皮膚バリア機能の異常などの非アレルギー的要因とハウスダストマイトなどによるアレルギー的要因とが複雑に関連した皮膚病です。
すなわち犬では生涯に渡って、上手くお付き合いしなければならず、個々に合わせた治療が必要となります。
私たちは治療選択肢が一つでも多い方が良く、そのような意味では減感作療法も治療の選択肢の一つとなります。
ご興味をもたれたご家族様がおりましたら、是非かかりつけの先生へご相談してみてはいかがでしょうか。